龍神は水の神さま

みなさんは、神社やお寺に参拝したとき、手水舎(てみずや)に龍がいるのを見たことはありませんか?意識して見たことがないという方もいらっしゃるとは思いますが、龍をモチーフにした水口(みなくち/水が出る場所)は、全国の社寺で多く見られます。

※神社庁のHPでは、てみずやと表記されていますが、地域や神社によって、ちょうずや、ちょうずしゃ、てみずしゃ、とも呼ばれます。また、水口も、みずぐち、みずくちと呼ばれることもあります。

なぜ龍がモチーフに使われているのかというと、日本では昔から龍神が水を司る神さまとして崇められてきたからだと考えられています。

ご存知のように、水はすべてのいきものにとって命の源です。命をつなぐ水は尊いものであり、神道(自然信仰)では穢れや邪気を祓う神聖なものとされました。神社の手水舎で、左手、右手と水をかける行為は、心身を清めるために行うものですから、この水を「龍神から出ている水」と見せることで「神聖な水である」ことを表現しているのです。

現代のように、蛇口をひねれば水が出てくる時代に暮らしていると、水が神聖だとか穢れや邪気を祓うということにピンとこない方もいらっしゃると思います。ですが、「水に流す(過去のいざこざなどをすべてなかったことにする)」という言葉は、水が穢れや邪気を祓うことが語源ですし、「禊(みそぎ/罪や穢れを落とす、または、神事に従事するために、川、滝、海などで身を清める行為)」も「身濯ぎ(身を洗濯する=身を洗う)」からきていることを鑑みると、日本に暮らす人々にとって、水がいかに神聖なものと考えられてきたか、おわかりいただけるかと思います。

さまざまな龍の吐水口がある

手水舎に置かれている龍は一体が独立して置かれているものが多く見られますが、浅草寺(せんそうじ/東京都江東区)のように円形の水盤に8体の龍が配されたものもあれば、深川不動堂(ふかがわふどうどう/東京都台東区)のように独立した3体の龍が並んでいるものなど、さまざまな種類があります。

金龍山浅草寺
深川不動堂

水口の龍は青銅製のものが多いですが、石で造られたものもあります。本法寺(ほんぽうじ/横浜市港北区)にある「石造龍吐手水鉢(せきぞうりゅうとちょうずばち)」は一塊の石材からすべてを彫り出したもので横浜市有形文化財になっていますし、法隆寺(奈良県生駒郡斑鳩町)の手水舎の石龍も見ごたえがあります。

本法寺の石造龍吐手水鉢
法隆寺(南大門から入って正面の中門と五重塔前にある手水舎)

龍は厳めしい顔をしているものが多く見受けられますが、なかには少しユーモラスな顔をしているものもあります。実にさまざまな龍がいますので、寺社仏閣巡りをご趣味にされている方、龍にご興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。

当サイトは「龍神伝説アーカイブス」の名の通り、龍伝承のあるスポットを中心にご紹介していますが、龍神スポットページでは、全国の龍神にまつわる神社もピックアップしていますので、もし龍神にまつわる神社に訪れたときには、手水舎の水口がどのようになっているか、ぜひご着目ください。

写真:PIXTA

share
◎このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。